中国における工場経営のリスク(国による地上げ)
※今回は個人や企業を特定される為、あえて実名は伏せます。
長年友人関係にあるM氏は上海郊外にある工場経営の2代目社長。
工場はバグフィルターの技術開発と生産で、環境ビジネスとも関係のある事業を営んでいる。
私と知り合ってから約20年経つが、これまで裕福な家庭環境であった彼。
先ほど私に電話があり、事業が頓挫しそうになっているとの事。
どうやら彼の経営手腕から起因している訳ではなく、いわば上海市政府からの影響。
つまり、彼が営んでいる工場敷地を年内中に撤収しろとの命令が下されたようだ。
彼の選択は3つしかない。
1.2022年12月までに現在の工場を退出し、別の場所を探すこと。
2.2022年12月までに事業そのものを廃業させること。
3.2022年12月までに事業を転換すること。(貿易業や開発研究に特化した事業)
いずれの選択でも、大きな出費となるし、これまでお取引のある先への影響も計り知れない。
では何故、上海市政府から工場の敷地を撤収しろといわれているのか、日本の感覚から到底想像出来ないが、
中国では不動産を購入すると言ってもあくまで”使用権”であり、党から撤退しろと言われれば従わざるを得ない。
彼曰く、「今回のゼロコロナ政策で上海市の税収が枯渇しており、加えて今居る場所の近くに地下鉄などの交通機関が整備されたので、
土地が値上がりする前に撤収になったと思う。」
これは上海市だけでなく、現在の中国全土に言えること。そう、国にお金が無いのだ。
そうなるとこのような事態が生じる。いわゆるチャイナリスクを再び目の当たりにした。
弊社は貿易会社と科技会社という業態ですので、このような国による地上げのような事にはならないが、
現在取引のある工場の将来におけるリスクを予見し、複数購買先を予め選定しておく大切さを改めて感じた。