中国OEM工場との機密保持契約について(競合他社への情報漏洩)
前回、中国OEM工場に委託する際に懸念される”商品の転売リスク”について書いたが、今回は”競合他社への情報漏洩”について書く。
自社工場を持たない、いわゆる”ファブレスメーカー”にとって、新商品の企画段階で競合他社への”新商品の情報漏洩”や、”生産工場身元の情報漏洩”は最も避けたいところ。
私も前職のファブレスメーカーのSCM部に所属していたので、その重要さを痛感していた。
ファブレスメーカーにとって、製造工場などの固定資産や設備投資、人的投資をせずとも、市場のニーズに合わせてスピーディに、かつフレキシブルな生産が出来るのが大きな利点であると同時に、第三者への製造委託をするため、どうしても”新商品の情報漏洩の危険性”というデメリットが付きまとう。
特にパワーブランドを持つ日本企業の場合、”OEM委託先”は競合他社にとって最も得たい情報のひとつである。新製品情報漏洩による損失だけでなく、もし競合先に同じOEM工場に委託されると市場イニシアチブが取れなくなる危険性もある。一方、OEM工場にとって、パワーブランド企業のOEM生産を行っているだけで信用が付くため、新規顧客獲得のための営業ツールにさえなり得る。
日本国内の工場にOEM委託し、万が一違約した場合、日本国内で法律に基づき法廷で争うことは可能だが、中国の工場にOEM委託し訴訟になった場合、どちらの法律解釈と法廷に基づくのか、という記述がある。
仮に、日本法に準拠、日本の裁判所で争うという条件で締結した場合でも、本当に中国側が出廷するのかという懸念はある。
そうなった場合、殆どが泣き寝入りでは無いだろうか。
機密保持契約を締結したからといって、全く現地に赴かなかった場合、その危険性はさらに増す。
会社の規模にもよるが、以下の施策をもって継続的に行うことが大事と考える。
1.現地に駐在員事務所を設置し、定期的にOEM工場を視察する。
2.現地の第三者調達機関と提携し、定期的にOEM工場を視察する。
3.日本側から人員を現地へ派遣し、定期的にOEM工場を視察する。
4.並行購買を堅持し、常に”何かあるぞ、この会社と付き合って行くと得、裏切ると得にならない(他工場へ移管される)”という認識をOEM工場に与え続ける。
※4は、過去に書いた”中国ビジネスにおける時間感覚”でも述べたとおり。
次回は、中国市場での拡販を求め、ブランドを持つ日本企業が中国企業との”総代理契約”の締結後に生じる様々な問題について書く予定。