中国への渡航ビザの現状について
最近、上海と大阪間の航空チケット代がコロナ禍前のレベルに戻りつつある。
一時は片道30万円もしていたが、現在は吉祥航空だと往復4000元前後(約8万円)、運が良ければLCCだと2000元くらい(約4万円)でも購入が可能。
今のところ、日本から中国にビジネスや観光で来る場合、在日中国領事館でマルチ(M)ビザの申請をしなければならないが、必要な書類が多岐に渡り、しかも煩雑で予約がなかなか取れない状況だと聞く。
そんななか、弊社も日本の取引先からの来客が増え始め、「15日間渡航ビザ免除措置の再開はいつなの?」とよく聞かれる。
中国への旅行や出張、或いは在住していたことがある人なら知ってると思うが、かつて中国政府は日本人に対する”15日間のビザ免除措置”があった。
私が記憶している限り、この日本人に対する”15日間のビザ免除措置”は胡錦濤政権時代から20年以上行われてきた。
この措置は、中国に対する投資が活気付いてきた当時の中国にとっても有意義なことであった。
「外国人への優遇」が強かった時代で、背景には海外からの技術獲得や投資を促す目的があったからこその措置である。
私見だが、中国人には基本的に「相互主義の原則」という考えが根底にある。
つまり相手側との利害関係は、”対等以上が必須”で、そこには「面子」の意識も強い。
90年代後半、日中間の経済格差はまだまだあった。中国はGDP成長率が二桁台の時代。
そんな状況だったからこそ、日本人に対する”15日間ビザ免除措置”が適用された。
本音に反して「いつでも中国にいらっしゃい!」という時代が長らく続いた。
実は、この15日間のビザ免除措置の停止の数年前から、Zビザ取得(居住証)の難易度が急激にあがった。
それまでは、”無犯罪証明書”や”健康診断”で問題がなければすぐに居住証が取れたが、
それに加えてポイント制(大卒以上か、それが無ければ相応の納税が必須)が追加された。
そして、コロナ禍による往来が遮断されたタイミングでこの”15日間のビザ免除措置”も停止。中国にとっては良い口実になったように思う。
中国ビジネスに関わる人達の間で、「ビザ免除措置が再開されるのか?」という関心が集まっている。
個人的に思うに、恐らく再開はされないだろう。いや、再開するにしても”条件付き”だろう。
その条件とは?
”日本が15日間のビザ免除措置の再開させたければ、中国人に対しても同様かそれ以上の優遇措置が条件”ということだ。
現に、2023年6月22日、中国外務省の呉璽領事局長は北京での記者会見でその事に言及した。
私見だが、背景はいくつかある。
1.中国は今のところ、観光インバウンド政策を用いた経済活性化を考えていない。
2.あくまで自国内で需要と供給を活性化させようとしており、むしろ14億もいる中国人には海外ではなく、中国国内で消費させたい思いが強い。
3.海外からの技術よりも自国の技術の方が高いと自負しているので、かつてのような外国資本の誘致に対するモチベーションが低くなっている。
※今の若い世代はかつて中国が海外からの技術を学んできたことなどを知らない、むしろ初めから全て中国独自の技術で、かつ海外を凌駕していると考えている人も居る。
4.今や大国になった、という意識から、他国に対して「相互主義の原則」を持ち出した。
これらの背景や意識変化により、現在出張で来られている外国人出張者は大変不便さを強いられている。
現金が使えない現在のスマホ決済がメインの中国社会で、WECHATやALIPAYで電子決済するには銀行口座と紐付けさせないといけない、
そのためにはZビザ(居住証)が必要、出張者は物理的に不可能である。
交通機関や配車サービス(didi)を使うにしてもWECHATやALIPAY決済しか出来ない。
空車タクシーは皆無、全てスマホ配車でしか呼べない。
つまり、中国への出張者にとって最も頭が痛いのは”移動”だ。
これが”中国は観光インバウンドを全く考えていない”と言われる所以で、それにより、ゼロコロナ政策が解除されても、未だに海外からの観光客は見ないのが実情である。
そもそも訪中すると、色んなリスクがあると日本では報じられているが、ここでは割愛する。
なかなか円滑化されないですね。