メイドインチャイナについて

中国国内でよく「一分钱一分货」という言葉を耳にする。
訳すと「安ければ安いなりに、高ければそれなりの品質」という意味である。

近年、中国では人件費や物価の高騰により生産委託側にとってのメリットが失われて来たが、日本が未だにデフレ経済から脱却出来ずにいるのもそのように感じる要因のひとつだと考える。
「良いモノを如何に高く売るか」だったのが、「良いモノを如何に安く多く売りさばくか」に移り、そして今は「良いモノを小ロットでも安く、そして早く届けるか」がテーマとなった。
これでは企業の利益がどんどん損なわれ成長への投資も出来なくなる。

90年代の半ばから「価格破壊」という、流通の大変革が行われた。
一般の人でも手軽にインターネットが使えるようになった事で、流通の垣根が無くなり、商社が持っていた「情報の優位性」が失われた。

結果的に、日本の消費者の大多数が低価格商品しか目を向けられなくなり、企業の収益が上がらないので社員の給与も上がらない、安いモノしか売れないというデフレスパイラルから脱却出来ずにいる。

日本企業もキャッシュフロー経営を考え、中国の生産委託工場に対し「低価格」「短納期」「高品質」「小ロット」「多品種」を求めるようになり、
中国工場にとって日本市場に目を向けるより生産ロットが大きい欧米市場の方が魅力的と感じるようになった。

また、リスクヘッジの観点から生産拠点の日本国内回帰という動きもあるが、大手企業や半導体などの基幹部品を扱っている業種以外の中小企業にとって難しい課題であるし、
なんと言っても日本では労働人口の減少や働き方改革(複数社でパートタイム勤務)による安定した人材確保が達成出来ないと国内回帰は難しい。
外国人労働者のさらなる受け入れの議論も加速しているが、企業が外国人に対する不当な雇用問題や、日本人の就業チャンスの低下に対する懸念も払拭しないといけない。

話を戻すと、先述の「一分钱一分货」という生産工場との意識上のギャップを如何に埋めるかがファブレスメーカーの課題と言える。
メイドインチャイナは全て「安かろう悪かろう」と思っている人も居るかもしれないが、質の良いメイドインチャイナ製品もある。結局のところ「一分钱一分货」だと思う。